オリエンタルラジオ「芸人交換日記〜リーディングシアター」

結成11年目にして泣かず飛ばずのお笑いコンビ「イエローハーツ」が、コンビのこれからのために始めた交換日記。芸人として、そして30歳の男として、ときに諍いつつも本音を綴った1年間が、ふたりのその後を運命づけていく。
解散を告げた甲本が選んだ道、告げられた田中が辿った道。二度と重ならないはずだったふたつの道を、それぞれの真実を、一人の少女がつなぎあわせる――


鈴木おさむさん原作の「芸人交換日記」。
その朗読劇を、大阪で、オリエンタルラジオが、演る。


これは、観るしかないでしょう。



・・とはいえ、解散するコンビものを実際のコンビが演る(オリラジに限らないけど)、というところには、躊躇がゼロだったわけでもなく。
それでも、一度きりの「泣きのオリエンタルラジオ」((c)あっちゃん)を見逃す手はないだろう、ということで、しかも大阪なら近いし、なので、観に行くことにしたのでした。


ちなみに、原作は実は、半年ほど前にざっと流し読みをしただけでした。
観に行くことが決定して、ネタバレあらすじで予習はしましたが、原作を読み込むとイメージとの違いが気になってしまう性質なので、読み直しはせずに、当日。
終わってから読み返して、個人的には、これでよかったな、と、思います。



さて、本編が終わってからのトークであっちゃんも語っていたけど、真逆なところとシンクロするところが極端だった、オリエンタルラジオとイエローハーツ。
イエハーの「華がない、運がない、事務所が小さい」に対して、オリラジは「華はあるし、事務所もでかい」(というあっちゃんの天狗発言に、慎吾「こわいこわいやめて」www)
イエハーよりもむしろ、BBの方が、近い。(イケメン云々の発言と、慎吾のツッコミ再びw)
イエハーが後輩の番組の前説をやる場面が出てくるけど、オリラジはむしろ、先輩に前説をやってもらっていた立場で、そのときの先輩の気持ちは、考えられなかった、考えようとしなかった、考えたくなかったがゆえの「無」だった、と。
ただ一方で、キャスティングは大方の予想どおり、ボケの田中をあっちゃん、ツッコミの甲本を慎吾。
年数は違うけど、どちらも30歳、そして偶然にも慎吾の誕生日の公演に、物語の中でも誕生日を迎える場面が出てくる。
(そのときは公表前だったけど、家族が増える、というところにもシンクロを感じてたのかな、あっちゃん)



福田彩乃さんが、甲本の彼女(奥さん)と娘の二役を演じていたのだけれど、とてもよかった。静かに始まる語り口が、物語のトーンに合っていて。長セリフもよどみがなくて、最後の科白、ぐっときました。

演出的には、いろいろ思うところもあったりするのだけれど、朗読劇をあまり知らないのであれだけど、暗転とかSEのタイミングが難しいな、と。
セットの、背景スクリーンの使い方は面白かった。名前が自筆で出るのが素敵。
あと、天国漫才のためだけに組まれたステージが、よかった。せりあがるサンパチマイクが、なんだか感慨深く。あと、あっちゃんが、階段上がって相方と顔合わせたとき不思議な感慨があった、て話していて、両袖から上るかたちでよかったなあ、と思った。めちゃくちゃ高かったけど。



以下、さらに細かくオリラジどっぷりなネタバレ感想なので、ちょっと隠します。




冒頭、あっちゃんの第一声がすこし嗄れ気味で、どきっとしたけど、語尾が消えるような語り口がとてもよかった。
最初冷やかにですます調から、たまにタメ口になったり、が、なんともらしくて、あっちゃんの冷静な声に似合う。はじめのトーンが落ち着いてたからこそ、感情が出る場面の声の揺れが際立ってた。


慎吾くんは逆に、あっちゃんと対照的な明るくて軽やかなトーンが甲本のキャラクタに似合っていて、キレてるときですらふわっとしてるのに、何かを決断したときに落ち着くのが、どきりとさせる感じで。
甲本の独白の日記の、回想のカラ笑いとか、想いの行く先だとか、声が揺らぐのも切なくてやられた。


こう書くと、ほんとにふたり、正反対で、田中と甲本のキャラクタによく合ってたんだなあ、と思う。


ちなみに、最初に涙腺やられたのは、笑軍初戦前日の日記。
「お前、面白い」
「甲本、一番面白いです。一緒にコンビ組んでよかった。」


文字で読んだときはさらっと読み進んだフレーズだったのだけど、そして直前まで笑いの起きてる明るいシーンなのだけど、なんだか、ここのやりとりに、うちぬかれたのでした。




それにしても、本編最後に天国漫才があるのが、原作もそうだけど、いいなあ、と思う。
涙の余韻が残ったまま、でも漫才はすっかりさっぱり笑っておりました。泣き笑い、とはいえ、泣きより笑いが勝つ感じ。
ネタもオリラジアレンジ?なところもはさみつつ(彩乃ちゃんいわく、3回の中で一番漫才が長かった、らしいw)、最後の最後を、甲本「タナちゃんかっこいー!」田中「カッキーン☆」で締める、という粋な計らい。しかも、カッキーン、を慎吾に向かってやって、鼻にぶつかるというアクシデントつきで(笑)



そしてさらに、3人でエンドトーク
第一声までちょっと照れたような間があったけど、トークが始まってしまえば、上に書いた発言やら、チケット状況に言及して「サクラのひと〜? NSCぽい子とかいない?」とか質したり(先週のデジャヴw)、3回出演の彩乃ちゃんにコメント振ったり、と、いつものオリエンタルラジオ
途中、慎吾が裏で泣く予告したことバラした瞬間、言っちゃだめ!な感じで慎吾くんがあっちゃんの手をはたいてわーわー焦ってたのが、なんか珍しくてかわいかった。お笑い絡みだと腹を括った反応をする子なのに、ちょっと違うモードだったのかな(笑) あっちゃんの涙を引っ張る、的なこと言ってたことも、彩乃ちゃんにばらされてたw


そんなこんなで、最終的に、泣かずに終えたあっちゃんと、独白のシーンで声が潤んだ慎吾くん。
あっちゃんは、上に書いた「華がない〜」でシンクロしなかった、て話したけど、慎吾くんは、ツッコミとしての甲本にすこし共感したのかな、と思ったりした。
あと、オリラジがブレイクしていたころでなく、ふたりにとってどん底だった時代や2、3年前でもなく、今のふたりで観れてよかったな、と。
安心して、見届けることができました。



さらに、慎吾の誕生日プレゼントは、次のトークライブで、とかそんな流れもありつつ。感想のハッシュタグ指定もありつつ。
泣いた名残はあっても、トークまできっちり楽しくて、しあわせに穏やかな気分で帰路に着ける終演でした。